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粟津潔
経歴

およそ30年前にこの家を建てた。当時は田んぼと小高い山の中であった。その頃は、ホタルが迷い込んで来る事さえあるような自然もあったのだが、今では家の建つ隙間もないくらいの平凡な住宅地となってしまった。

建築デザインは原広司さんにお願いした。斜面を利用したこの「AWAZU HOUSE」は、若き日の彼が手掛けていた反射性住居=Reflection Houseの最初の作品である。平面はほぼシンメトリーで、左右の壁は鏡い写し出された様、反射的である。近年に彼が手掛けた京都駅に通じる魂がこの家にもある。

映画「風流」
この家が建って間もないある夏の終わり、午後3時ぐらいだっただろうか、白い壁を撮影して短編映画をつくった。
小さな窓から白い壁に庭の栗の木の枝葉が揺れている影がくっきりとした形で揺れ動いていた。早く動く影、ゆっくりと動く影。わたしはこんな景色をいくつも撮影し、編集した。光りと影、そして音の響き。反射する家の中で踊っている。
わたしはこの作品を「風流」と名付けた。
30年間、この家で無数の仕事をしてきた。デザインの仕事、絵を描く仕事、版画を刷る仕事、そして短編映画も作った。ある夏の日の午後、光りと影の中で私はまたそのアトリエにゆき、プリンスやカタルーニャの民謡「鳥の歌」を聞きながらいつものように仕事を始めるのである