本の装幀を、どのくらいやっただろう。数えてみたことがない。随分あるが、気に入っているものは、そんなに多くない。自分でやった仕事であるから、みな同じようなものだが、心にのこる仕事は、そんなにできない。
デザインするなかで、もっとも興味ある仕事でありながら、そうである。良い仕事が、できそうで、なかなかできないのが、装幀という仕事であるらしい。著者の書いた内容もあり、本の単価から割りだされた、素材や、印刷、色数などの限界があったりする。自由にやることは許されない。
出来上がりをほぼ想像できるが、やはり出来上がってみなくては、わからない。何年かたって、ふといいなと思うこともあるし、あの時は、こんなことをしたのだなと思わせたりする。
本の装幀の仕事は、他のデザインとちがって、幸か不幸か、手元にのこる仕事である。書棚に、私のデザインした書物がぎっしり積もっている。時折手にしてみるのだが、そこには、私のデザインの記憶が、いくつもある。そうした記憶を見るのは良いが、これからの仕事を、記憶へともどすわけにはいかない。新しいイメージへ向かわなければならない。
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